理事長のことば

「比叡平・陽だまりの会」とは
理事長 笈田 昭笈田理事長の顔写真

 私は、高等学校を卒業して京都へ出て来るまで、福井の田舎の小さな村で過ごしました。実家は農家で、10歳ぐらいから一人前に田植えや稲刈りなどの農作業をしていました。農作業の辛さなど問題ではなかったのですが、一番嫌だったのが、いわゆる農村共同体のシステムでした。今から考えると、過酷な農作業を行うには共同体システムが必要不可欠のものであったと分かるのですが、子どものころは、共同体の中で個人の情報が共有され、学校の成績まで知られてしまうという状態には我慢ができなかった、ということでしょう。私の父は沖縄で戦死し、私が家を継ぐということが無くなり、その村を離れたわけですが、それから数十年、老齢に達した今になって、生きてきた過程を振り返ってみると、次のようなことが言えるのではないかと思うのです。
 人というものは、一人では生きていけない。我々はいろんな人々に助けられて生きているのだ、と言えます。助け、助けられるということは自然のことであり、それに特別の意味づけをする必要はないでしょう。

 「比叡平・陽だまりの会」は、高齢者や障害をもっておられる方、成人も子どもたちも住民の皆さんが、安全に安心して生活していただくお手伝いをしようとするものです。また、生きていくうえで一番大切なことは、生きがいを持つということでしょう。生きがいということは、人それぞれ考えが違うように、個々に異なると思います。仕事であったり、趣味であったり、旅行や遊びであったり、それはそれで生きがいを感じることは重要なことです。これは私個人の意見ですが、生きがいを感じるということの根本は、"自分の行為が何らかの形で他の人の役に立っている"と思えることにあるのではないか、と思うのです。そのような生きがいの場を提供させていただくことも、この「比叡平・陽だまりの会」のなすべきことと考えております。

 「比叡平・陽だまりの会」は、このホームページの中の"活動内容"のところに示されているような仕事をしていきます。
 第一に、地域の集いの場(パソコン、うたごえ、カラオケ、映画鑑賞、絵画、朗読など)の提供で、これはNPO法人になる前から「環境と福祉の家」で行ってきました。参加される皆さんに大きな楽しみを提供しています。
 第二に、高齢者や子育て世代を助ける生活支援活動で、庭の草引き、木々の剪定、病院への送迎、生活のお困りごと全般の手助け、子育て世代のための幼児の預かり、などなどです。
 第三は、これから行う予定ですが、福祉有償輸送といわれるものです。これは、障害者、介護認定者、要支援者の方々を、タクシー代の半額ぐらいの低料金で、病院その他へ車でお連れするものです。これから大津市に申請し、審査を経て認定されれば、来年(2010年)の4月から開始される運びです。
 第一から第三までの活動は、活動を行なう方々に"人の役に立っている"という思いの喜びをも提供すると思っております。
 第四は、医療や福祉の面での活動でありますが、これはまだ具体的な活動は行なっておりません。今後、比叡平という不便な地域における種々の医療相談のできる診療所の設置を目指して、学区の自治会や社会福祉協議会と協調して動いていこうと考えております。
 第五は、環境問題での活動を考えておりますが、これもこれからの活動です。ご存知のように、温暖化問題で(本当は寒冷化のほうが人間の生存にはもっと大きな問題なのですが)世界は揺れ動いていまして、我々は子孫の生存のために今我々が何をすべきか、という大きな命題を背負っています。我々個人ができること、そしてこの地域ができることを皆さんとともに考え、できることを一つずつ実行していければ、と願っています。

 2009年9月1日のこのNPO法人の設立以来、多くの方々がその目的・趣旨に賛同されて会員として加入してくださいました。私としては、会員の中で一人でも多くの方が、このNPO法人の運営に参画していただいて、ともに活動し、ともに"人の役に立つ"喜びを味わっていただくことを切に希望しております。